
「薬剤師の仕事はAIでなくなる、と聞いて不安になった」
「6年かけて取る資格が、将来いらなくなるの?」
「機械でできる仕事なら、自分は何を勉強すればいいんだろう」
そんなふうに思って、深夜に「薬剤師 AI なくなる」「薬剤師 将来性」とスマホで検索して、不安なまま画面を閉じていませんか?
結論から先に言います。薬剤師の仕事はなくなりません。ただし、仕事の中身は変わります。調剤(処方箋をもとに薬を用意し、確認して渡すこと)は法律で薬剤師にしかできない一方、薬を取りそろえる作業は、機械や薬剤師以外の人に置き換わりつつあるからです。
実は、やくフェスに参加している薬局の採用担当に話を聞くと、出てくるのは機械の話ではありません。人と向き合う力の話です。
今回は、法律と国の方針、機械に置き換わる作業と残る仕事の分け方、そしてAI時代の就職先の選び方を本音で語ります。
1. 「薬剤師はAIでなくなる」のリアル|法律と国の方針で見る
まず、法律です。薬剤師法の第19条には、薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならないと書かれています。どれだけ機械が進んでも、調剤の責任者は薬剤師です。
一方で、2019年4月に厚生労働省が出した通知では、薬剤師の指示のもと、目の届く場所で行う「判断を加える余地に乏しい機械的な作業」なら、薬の取りそろえ(ピッキング)などを薬剤師以外の人が行えると整理されました。最終的な確認と責任は薬剤師にあります。
→ ここが大事です。切り出されるのは「作業」で、残るのは「判断と責任」。AIや調剤ロボットは、この「作業」の部分を担う道具です。
国の方針も同じ向きです。2015年に厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」は、薬剤師の仕事を「対物業務から対人業務へ」(モノを扱う作業から、人と向き合う仕事へ)移すことを掲げました。
さらに薬剤師法の第25条の2では、薬を渡すときの情報提供と指導に加え、必要があれば飲み始めたあとの状況を継続して把握することが薬剤師の義務として定められています。これは機械ではなく、人の仕事です。
※ 法律と通知の内容は、e-Gov法令検索・厚生労働省の公式サイトで2026年10月17日に確認したものです。制度は変わるので、最新は公式の案内で確かめるのがおすすめです。
専門家コラム:機械が増えるほど見られる「受け答え」
人事部長の経験がある、やくフェス主催者に「面接でこの子いいなと思う瞬間」と「採用を見送った学生の共通点」を聞きました。どちらも、機械にはできないことでした。
採用する側のリアルボイス
いいなと思うのは、笑顔が素敵で、第一印象が明るい学生。受け答えがはっきりしていて、聞き上手と話し上手のバランスが取れている学生です。逆に見送るのは、受け答えが噛み合わず、質問の意図とずれた回答が続く学生です。
(武田 隆芳/漢方薬局 嶺耀堂・やくフェス主催者)
ここからは編集部の考えです。「質問の意図を読んで返す」は、薬局の窓口で毎日使う力であり、機械がいちばん苦手な部分です。AIが作業を引き受けるほど、人はこの力で評価されるようになります。
【あわせて読みたい】
採用する側が面接で実際に見ているものは、こちらで2人の言葉をまとめています。
2. 【比較表】機械に置き換わりやすい作業と、薬剤師に残る仕事
| 区分 | 例 | 根拠・理由 |
| 機械や薬剤師以外に置き換わりやすい作業 | 薬の取りそろえ(ピッキング)・一包化した薬の数の確認・納品された薬を棚に納める作業 | 2019年の厚生労働省の通知。薬剤師の指示と責任のもとなら薬剤師以外でも可 |
| 薬剤師にしかできない仕事 | 調剤の最終確認・疑義照会(処方の疑問を医師に問い合わせること)・調剤の責任 | 薬剤師法 第19条 |
| 国が増やそうとしている仕事 | 服薬指導・飲み始めたあとのフォロー・在宅訪問・医師や看護師との連携 | 薬剤師法 第25条の2・患者のための薬局ビジョン |
表を見ると分かるとおり、減るのは一番上の段だけです。真ん中と下の段は、法律と国の方針で薬剤師に残り、むしろ増やそうとしている仕事です。
3. AI時代に薬剤師の価値が残る3つの理由
① 「調剤の責任」は法律が薬剤師に置いているから
機械が薬を取りそろえても、最後に確認し、責任を持って渡すのは薬剤師です。→ 自動化が進むほど、最後に確認する人の価値は上がります。
② 相手は「データ」ではなく「人」だから
同じ薬でも、飲めない事情・生活のリズム・不安は人によって違います。その人に合わせて聞き返し、言葉を選ぶ仕事は、答えを出す機械より意図を読む人に向いています。
③ 国の方針が「対物から対人へ」だから
薬局ビジョンも、薬剤師法の第25条の2も、向きは同じです。これから評価されるのは、人と向き合う仕事。機械は、その時間を作るための道具です。
4. AIは就職にどう影響するか|就職先を選ぶ2つの軸
AIで仕事がなくなるかどうかより、どの薬局で、どんな仕事を任されるかのほうが、あなたの将来を左右します。
軸の1つめは、機械で浮いた時間を、薬剤師が何に使っているかです。見学や食事会で「機械を入れてから、薬剤師の仕事はどう変わりましたか」と聞くと、その薬局の考え方が分かります。
軸の2つめは、対人業務を学べる場があるかです。在宅訪問、飲み始めたあとのフォロー、かかりつけとして続けて関わること。こうした経験を積める薬局ほど、AI時代に強くなれます。
面接でのアピールも同じです。「AIを使いこなせます」より、人と向き合う場面で何をしたいかを自分の言葉で話せるほうが、採用側には届きます。
対人業務の代表である在宅の仕事の中身は、こちらで詳しく紹介しています。
薬剤師とAIに関するよくある質問(FAQ)
薬剤師の仕事は、本当にAIでなくなりませんか?
調剤は、薬剤師法の第19条で薬剤師にしかできないと定められています。
なくなるのではなく、作業の一部が機械や薬剤師以外に移り、人と向き合う仕事の割合が増えると考えるのが実態に近いです。
AIやITの知識は、就活で有利になりますか?
使えること自体より、「何のために使うか」を言えるかが見られます。
「機械で浮いた時間を患者さんに使いたい」のように、人に向かう目的とセットで話せると強みになります。
機械化が進んでいる薬局と進んでいない薬局、どちらを選ぶべきですか?
どちらが正解というものではありません。見るべきは、機械で浮いた時間を薬剤師が何に使っているかです。
見学や食事会で、薬剤師の1日の時間の使い方を聞いてみるのがおすすめです。
人と話すのが苦手です。それでも薬剤師としてやっていけますか?
最初から得意な人は多くありません。大事なのは、分からないときに質問の意図を聞き返せることです。
やくフェスのような場で、働いている薬剤師と話す回数を増やすのが近道です。
まとめ:なくなるのは「作業」、残るのは「人と向き合う仕事」
薬剤師の仕事は、AIでなくなりません。調剤の責任は法律で薬剤師にあり、国の方針は「対物業務から対人業務へ」。機械に移るのは、薬を取りそろえる作業の部分です。
だからこそ就職先は、機械で浮いた時間を人に使っている薬局か、対人業務を学べる場があるかで選ぶのがおすすめです。
その薬局が機械と人の仕事をどう分けているかは、働いている人に聞くのが一番です。やくフェスでは、薬局の人に直接たずねられます。
最新のイベント情報はLINEを登録して待とう。
「次のメシ会はいつ?」、「どんな人が来るの?」といった最新情報は、公式LINEでいち早くお届けしています。
イベントへの申し込みはもちろん、何か気になる点などありましたらお気軽にご連絡ください。
- 30秒で簡単登録!
- 最新のイベント告知が届く
- 個別の相談もOK
記事監修者 漢方薬局 嶺耀堂 薬剤師・やくフェス主催者 武田 隆芳

これまで4年間病院、8年間調剤薬局で勤務。
西洋薬で様々な事を学んできましたが、身近にいる人の悩みにもっと深く関わり治していきたいという想いがあり漢方の道へ。
西洋医学・東洋学にも精通。
また人事部長の経験から人を繋ぐ取り組み企業×学生の「やくフェス」を開催。
現在100人規模の人数が集まり随時開催されている。
記事監修者 株式会社アトイ・管理薬剤師

- 青森県弘前市出身 日本薬科大学卒業
- 卒業後は大学病院の門前の調剤薬局に勤務
- 地域のかかりつけ薬剤師を目指し吉祥寺エリアで勤務
- その後株式会社アトイに入社現在に至る
卒業してから調剤薬局一筋の経験を活かし、人材育成や教育に携わっていきたいと考え入社しました。
現在はあやめ薬局井草八幡店という店舗で管理薬剤師をして地域の方々の憩いの場として関わらせていただいてます。


